川口能活選手 試合終了後記者会見全文

--現役最後の試合を終えての気持ちは。
まだ実感がわかないですね。試合中に左のもも裏がちょっと張ってしまったんですが、明日から試合がないということで、たとえ筋肉が離れてもやる覚悟だったので。いつもでしたら、急いでアイシングしてケアをするんですけど、それをせずに終われるというか。ただ正直、実感はないです。

--全てをぶつけられた感じでしょうか。
そうですね。セレモニーでも話しましたけど、今シーズン、自分が出た試合で大量失点が続いていて、チームに迷惑をかけていて。今日も「4点5点取られたらどうしよう」と半分恐怖でしかなかったんですけど、1-0という、GKにとって理想的なスコアで終わることができた。 先日、DFの仲間である梅井(大輝)や工藤(祐生)と話をしていて、なんとか1-0で終わりたいですねと彼らと話していて。その通りのスコアで、自分のキャリアの最後をこうやって終わることができて、これだけの人がスタジアムに足を運んでくれて、僕は本当に幸せ者だなと思いました。

--1万2000人以上の観客が足を運びましたが、どのようなプレーを見せたいと思っていたか。
久しぶりの試合でしたし、正直不安はありました。鹿児島はJ2昇格を決めた力のあるチーム。自分にとって久しぶりの試合ということで。ただ、僕自身が引退するというのをみんなに話してから、選手たちのハードワークさというのが、さらに向上していったというか。 僕が出場した練習試合なんかでも、最初は0-4でリードされていたんですけど、(メンバーが)若手中心だったんですけど、若手の選手たちが頑張ってくれて、1点2点3点と返してくれて終了間際に4点目を決めて4-4まで試合を振り出しに戻してくれた。 彼らが、「能活さんには負けさせられない」と練習試合からそういう気持ちで挑んでくれた。トレーニングでもシュート練習やシュートゲームでも、能活さんに点を入れさせないとみんなが気持ちを前面に出してくれた。(引退を発表してから)この1カ月、選手たちとトレーニングしたのは本当に幸せな時間だった。今日の試合もみんなが助けてくれたし、自分がみんなと向き合ってくれたのを、みんながプレーで返してくれたのが本当にうれしかったし、選手たちに感謝ですね。

ーー後半にはビッグセーブがあったが。
キックのフィードのところで悪いリズムを僕自身が作ってしまっていて、試合を難しくしてしまったところがあったんですけど、1対1には自信があったし、守備においては絶対にやらせないという気持ちだった。決定的な1対1もありましたけど、ここまでプレーしてきた一番のストロングポイントだったし、自分にとってのストロングなところを最後の試合で出せたのはうれしかったです。

ーー味方が1点を取ってから試合が終わるまでは。
すごく長かったですね。ロスタイムも5分あったんですけど。PK判定だとか、ジョンが倒れたりとかして、仕方ないけど、もう少し短くしてほしかったんですけどね(笑)。でも、それだけ長い時間プレーをみなさんに見せることができたし、今シーズン、自分にとって不甲斐ない結果が続いていた中で、最後に1-0で終えることができてうれしかったです。自分にとってなかなか苦しい時期もありましたけど、最後に良い形で終われて良かったです。

ーー終了のホイッスルの時の気持ちは。
泣いて喜びましたね。梅もヨネ(米原祐)も近づいてくれて、1点救ってくれた丹羽(竜平)。彼は強面なところがあるんですけど、僕のところに来てくれたし、工藤も、スナオ(保●淳)も、も、みんな近づいてくれて……、思わず感極まってしまいました。

--現役最後のプレーはいかがでしたか。
キックのところでリズムが作れなかったんですけど、守備のところでしっかり仕事を果たせたというのは、自分にとって練習の成果を出せたと思うし、これだけの人がスタジアムに足を運んでくれて、その中で自分らしいプレーをできて、勝利につながったのは、最高に嬉しかったし、夢のようでした。 いつかはこの日が来る、恐れていたというか、この日を迎えたくないと思って選手は(現役を)続けていると思うんですけど、最後で、最高の終わり方ができて良かったし、自分が次のステージに向かうにあたって、スッキリした気持ちで、新しい挑戦ができると感じました。

ーー最後に相手チームの鹿児島サポーターからも「能活コール」がありましたが。
一生忘れないですね。今日は「引退試合」ではありませんし、J3の34節の公式戦で、鹿児島も勝利を目指していましたし、相模原も少しでも順位をあげるために勝利を目指して戦った。お互い真剣勝負で勝つことができた。そういった緊迫した試合にもかかわらず、サポーター、スタンドに駆けつけてくれたファン・サポーターがみんなで能活コールをしてくれたというのは、ほとんどないことなので。自分にとってキャリア最後の試合が、こういう形で締めくくれて、本当に良かったと思います。

ーー試合に向けて家族からの言葉はあったのか。
ウチの家内は、一番近くで、支えてくれていましたし……実は僕、今日の試合に向かうにあたって、すごく緊張していたんです。今までにないシチュエーションというか、最後の試合で良いところを見せたい、勝たなければいけない。3カ月以上試合に出ていない。そういった中で不安の方が大きかったです。 ただ、ウチの家内が最後の試合だから、楽しんで臨んでほしいみたいなことを言ってくれて、それで気持ちが楽になったというか。今までに数多くタイトルがかかった試合や、出場権がかかった試合を何度も経験しているんですけど、今日の試合は違った緊張感があったし、そういうところで、楽しくという言葉をかけてもらって、気が楽にはなりました。 あと、子供たちが昨日も、試合の前日なのに一緒にお風呂に入ったり遊んだりするんですよね。明日自分にとって最後の試合ということで、多少しんみりしてしまうこともあると思ったんですけど、そういう時間がないぐらい忙しい前日を過ごしていたので。いろいろ思い出す暇もなかったので、そういった意味で子供たちにも感謝です。しんみりとした気持ちになる、思い出してしまうような状況を作らせないぐらい、パパに対しての要求がいろいろあったから、子供たちにも感謝です。

ーー現役生活25年間、お世話になった方たちへのメッセージを。
本当に感謝の気持ちしかありませんし、正直、自分がこういう扱いを受ける選手だと思ったことは一度もなくて。子供の時からですけど、常にチャレンジを続けてきて、そしてチャレンジする場を与えてくれた、人生においてチャレンジする場を与えてくれたサッカー。そのサッカーに取り組む環境、ご指導をしてくださった指導者の方々、ともにプレーした先輩方、仲間たち、すべての人たちに感謝の気持ちしかありません。この気持ちをやはり、次のステージでしっかり恩返ししたいなと思います。

ーー次のステージで何をやるかは決まっているのでしょうか。
まだ決まっていません。自分が選手として、GKとして、やってきたことを、若い選手たちにフィードバックしたり、自分がやってきたことを継承できるようにという思いはあります。

ーーGKが一番かっこいい、子供たちに憧れられたいと話していたが。今日のプレーでも見せられたか。
1対1では見せられたかなと思うんですけど、フィードのところでイマイチ、キックが定まっていなかった。本来は、若い時にキックを自分の特徴として、ストロングとしていたんですが、最後の試合で自分がそれを出せなかったことは少し心残りではあるんですけど、守備において、ゴールマウスを守ることがGKにとって一番やらなければいけない仕事だと思うので、GKにとってやらなければいけない仕事をプレーで見せられたのはよかったと思います。

ーー他のチームの選手たちも駆けつけていたが、楢崎正剛選手の花束贈呈はサプライズだったのか。
そうですね。前日、前々日ぐらいかな……、正剛と電話した時に、「よっちゃん出るの?」って聞かれたんです。「たぶん、出ると思う」という話をしていたんですけど、なんでそんなこと聞くんだろうと思ってたんですけど、こういうことだったんですね。もしも僕が出てないとなったら、正剛がやめようかなということになっていたかもしれないし、正剛が来てくれたのは嬉しかったです。 田中隼磨や中村航輔とか、相模原でプレーしていた選手も、いろんな選手がわざわざ足を運んでくれて感謝の気持ちしかありませんし、いろんな選手が見に来てくれた試合で、自分らしさを出せて、これで心置きなく、選手を卒業というか、まだまだサッカー人としては続きますけど、選手としての役割は全うできたかなと思っています。

ーー若いGKにどういうことを託していきたいか。
基本技術というか、パフォーマンスは、代表に選ばれている権田(修一)選手や東口(順昭)選手、シュミット(ダニエル)選手、今日来てくれた中村選手もそうですし、JリーグのGKは素晴らしいパフォーマンスを見せていると思う。それを代表レベルで発揮してほしい。 代表でプレーするのは誇らしいし、非常に名誉ですけど、それだけに固執するのではなく、プレーできる喜びというか、自分より強い相手との戦いを楽しむぐらいのメンタリティを持ってほしい。「日本のゴールを守らなければ」という気持ちだと、どうしても本来の自分を出せないと思うので、自分らしさを出せる、そして強い選手と対戦する喜びを噛み締めながらプレーしてほしいと思います。

ーー古巣のジュビロ磐田が(J1で16位になって)苦しんでいるが、どう思っているか。
昨日、(ジュビロの)試合を見てました。僕はジュビロが絶対残留すると思って、その後髪の毛を切りに行く予定でした。ただ、あまりにもの喪失感に、髪の毛を切りに行くことすら忘れてしまいました。だから、こんなボサボサ頭になってしまったんですけど(苦笑)。 でも、ジュビロは追い込まれた時に力を発揮するチームなので、僕は全く心配していません、勝ち点41で残留できないのは正直ありえないというか、前代未聞の、それだけハイレベルな戦いをしているんだと思います。僕も入れ替え戦、プレーオフの経験はありますし、もちろんJ2から上がってくるチームは勢いがありますけど、ジュビロには歴史があるし、勝者のメンタリティがありますから。 必ず名波(浩)さんを中心にチームが頑張って、この状況をくぐり抜ける、また新しいジュビロを作り上げることができると信じているし、そうなると思っています。そうなります。絶対勝ちます。

ーー今シーズン、川口選手は6試合出場したが今日が初勝利だった。改めて、試合に勝つというのは、どういうことか。
勝つって大変だなと思いました。自分にとって(ガイナーレ)鳥取戦で0-7で負けた試合が、キャリア最後の試合になるかと思っていました。そう思っていた中、最後のチャンスをくれた西ヶ谷(隆之)監督、鷲田(雅一)コーチ、渡辺(彰宏)GKコーチには感謝の気持ちしかありません。 最後1-0という理想のスコアで終われて、これまで自分が出た試合でこれだけ失点を重ねたシーズンはなかったので、悔しいシーズンでもあったんですけど、最後に自分のプレーができて1-0で終われて本当によかったし、最後のチャンスをくれた西ヶ谷監督、鷲田コーチ、渡辺GKコーチには感謝の気持ちしかありません

ーー「特別な試合にしたい」と話していたがなりましたか?
おかげさまで(笑)。特別な試合にすることができました。本当に、ハードワークをしてくれた、ともに苦楽を共にした選手たち、それからパフォーマンスを引き出してくれたサポーターの皆さんの力が大きかったと思います。ありがとうございました。